円.光.絡みの話なので
どうかフィクションだと思って聞いてくれ
私は学校へ行くわけでもなく家出を繰り返す 所謂不良少女(笑)だった。よくドキュメント番組なんかで夜回り先生に諭されてるような子
幸か不幸か、見た目はかなり大人っぽかったので補導などそういった類のものに引っかかった事が無く、それが私の自由度を加速させていた
遊びたい、もっと遊びたいのに金が無い 水商売やフー〇クは年齢的にアウト
当時、JKビジネス最盛期だった為そういった店でバイトをしようとしたが寝坊&遅刻が続きクビになった
円.光.の温床というか それ目的でしか客が来ないような所ですらクビになる
とんだクズである
ストレスで更に物欲が増し 何も考えずに買い物ばかりした結果 ついに財布に300円程度しかなくなった。
そう思い、某大手出.会.い.系サイトに年齢を偽り登録をした。
円相場はJKの店で知っていたのでその条件を入力
すると面白いくらいバンバンメールが来る 。
中にはおしっこ飲ませてくれたら50,000なんてのも居たが素人目に見ても危ないのでシカト
何通ものメールの中から、なんとなく気になった人のメールに返信した
ゆき♂ (36) お酒と野球が好きです。よろしく
なんともオッサンらしいシンプルなプロフィール
ここまで情報が少ないと何も得られてないのと一緒である
一抹の不安を感じながらもメールのやり取りを進めていく
滞りも無くスムーズにメールが続き、なんと1時間半後に会うことになった
出.会.い.系で 知り合う人と これから寝る
ハッキリ言って異常だ 異常なのに何故か私は楽しみにしていた
会ったらどんなことを言ってくれるんだろう
どんな言葉で褒めてくれるんだろう オッサンだもん、こんな若くて可愛い女が来たら喜ぶでしょ
なんて 若さ故に私はとても図々しかった
自己顕示欲が強く、こんな出.会.い.系サイトで出会えば相手がメロメロになって褒めてくれる容姿であることは自負していたし そこに関しては 何も怖くなかった
見た目が若そうなので、一緒に街中を歩くのは抵抗があるとのメールを貰っていたので駅から歩いて5分程のコンビニ横の路地で待ち合わせ
ぶっちゃけホテル街ど真ん中で そんなところで私とオッサンが居たらもうソレにしか見えないわけだが 駅で待ち合わせるよりここを選ぶとは何ともオッサン心は理解し難い。
着きました、とメールをし不自然じゃない程度に辺りを見回しつつ相手を待つ。
囮捜査は覚醒剤関連以外だと出来ないよ
警察密着24時でやってたよ
確かに見たことあるわごめんよw
ただ、結構出.会.い.系でこういうことしたけど警察のお世話にはならなかったよ。運が良かったのかも
フィクションなのに野暮なレスあるな
そんなのにいちいち反応するなよなw
気にせず完結して欲しい
一応、 フィクションという体にしといてくれ
って感じ フェイクありの 実話ですけど、内容が内容なもんで スミマセン
わりとすぐに声をかけられると思っていた私は焦燥感でいっぱいになっていた
もしかしたら帰られたんじゃないだろうか?最初から冷やかし目的でメールしていたんじゃないだろうか?
ここへ来る片道分キッカリ300円で 電車賃も尽きた。
最初から会えるつもりで お金が入ることを前提で来たのでそれ以外の事が起きた場合の対処は考えてなかった。
この人が来なければ、携帯の充電も切れ、財布に1円しか入っていないという現状に心がわなないた
と、その時 後ろから声をかけられた。
「りささん?」
一瞬誰かと間違えてるんじゃないだろうかと思ったが りさというのは私がサイトに登録した偽名であるのを思い出した
ああ、どうも、はじめまして
と取り繕う私。焦りを感じ取られては困る 必死な売女だと思われ、ここで帰られては困る
オッサンの容姿は予想に反してイケメンだった なんて携帯小説みたいな展開があるわけもなく
身長169cmの私より少し小さめ 小太りで だけど清潔感のある熊みたいな人だった
これが初めての出会い。
よく見ると小さめのコンビニの袋を手に提げている
知らない誰かに 自分のことを想って何かを買ってもらうことなんてあっただろうか
よく見ると 真冬だというのに額には大粒の汗
この人は 見ず知らずの売女の為に走ったのだろうか?
不思議な感覚に襲われる
「立ち話も怪しいし、そこ入らない?」
それもそうだ。
右にも左にも立ち並ぶラブホテル こんなにあるけど、知らない相手だし どのホテルでも構わない
オッサンの少し後ろを歩いてラブホテルに向かう
妙にいやらしい色の部屋がやけにチープに見える
初めてというのに私は全くと言っていいほど緊張していなかった。むしろ これで2万円が手に入るという幸福感でいっぱいになっていた
オッサンは意外にも煙草を吸い始めた。マルボロの赤 オッサンらしい選択である
「こういうのはじめて?よくやる?」
唐突に聞かれて少し戸惑う 尋問のように聞こえて
ここでよくやると言えば乱雑に扱われるのだろうか?
少し黙ってしまった私に何かを察したようで
オッサンは自身の 出.会.い.系に関する笑い話をしはじめた
20歳だと言っていたのに ハリセンボンの春菜のようなおばさんが来てお茶だけして帰ったこと
シャワーしてる間に財布を盗まれ、逃げられたこと
どれも 本当に楽しい思い出のように話すから私も気兼ねなく笑った
出.会.い.系に関する注意事項で見たように シャワーは個別に浴びると相手に金品を持ち逃げされる可能性があるため
2人で入る
オッサンのまーるいお腹が可愛くて、気持ちもラクになり
裸になることで一気に打ち解けた
スタイルいいね、なんて言われながら
バスタオルを体に巻き風呂を出る
暖房の効いた部屋は少し暑く、すぐにタオルを取り二人とも全裸
のままベッドに飛び込む
先程のオッサンの笑い話のせいだろうか、どこかシュールに思えて2人でクスクス笑う
まあ約束は約束なので することしないと!と変なやる気に駆り立てられ、私の方から誘った
オッサンの乳首を舐め、徐々に固くなっていっているモノを咥える
ボディーソープの良い匂いがした
オッサンが くぐもった声を出すまでは良かったのだが数秒後
「やばいやばいやばい!出ちゃう!!!!」
舐める時もゴムをつけた上からしていたのにものの1分でイッてしまった
何か決まりが悪そうなオッサン
「これが原因で彼女と別れちゃってさハハ」
先程の笑い話をしていた時とはまた違う、悲しそうな笑い声が聞こえた
人それぞれだし遅.漏.よりは全然いいとおもうけど、なんて励ましにもなっていない言葉を投げかけ
処理をするためベッドから出る
シャワーを浴びて服を着て、雑談をする
不思議な事に オッサンとはベッドの外に居る時の方が距離が近く感じられ、安心感もあった
ホテルのサービスタイムも終了してしまう
これ 約束のお金、少ないけど。
渡されたのは小さい和柄のポチ袋
中を見ると 相場の2倍の金額が入っていた
こんなに!いいです!!なんて急に敬語になる私に笑いながら
独り身だからそれくらい使わせてよ~なんて言うオッサンを少し愛おしく思った
出.会.い.系で円.光.なんて無機質な出来事なのに
知らない女を金で抱くだけなのに
このポチ袋といい、コンビニの飲み物といい、このオッサンの人柄はきっと素晴らしいものなんだと感じる
最後に連絡先を交換し、またきっと会うと約束をしその日は別れた
続きはまた明日書きます
ごめんなさい
三文小説みたいな話だが長らく実父に悪戯をされていたため貞操観念そのものが他者とは確実にズレていた
対して嫌でもないセク□スをするだけで大好きなお金を貰える。これを仕事と呼ぶのなら私にとって天職なのかもしれない
オッサンに会ってから1週間、貰った金もほとんど尽きた。
オッサンのメールアドレスに連絡するのも 前回からスパンが短過ぎてどうだろうと思い悩んだ結果、また新たに相手を探す事にした。
それが間違いだった
携帯を適当に弄りながら待っていると前方からヒョロいサラリーマンが現れた
声を掛けられたわけではないが やり取りしたメールのなかに 細身、40代、黒いスーツのサラリーマンという容姿の特徴が入っていたため直感で こいつが今日の相手だと見抜いた。
早足でこちらに近付き、大した会話もなくホテルへ急ごうとする。
ホテルへ入り乱暴に脱がれた靴を意味もなく見つめて少し溜息が出る
前回のオッサンが良い人過ぎた為か 「出.会.い.系なんてこんなものか」と些か帰りたくなる私に、何かを悟ったオッサンは
捲し立てるようにこう言う
怒りと後悔で脳が揺れた気がした。
業者というのは、出.会.い.系に蔓延る 「円.光.デ○ヘル」の事だろう。私は違う、そんなんじゃない そんなものを仕事にしてるのではない。言いたかったけど現状、業者に属していないだけで、誰とでも寝る売女には変わりなかった
男は苛立つ様子を隠すそぶりも無くソファーにどかっと座っる
で、どうすんの
語気を荒げるサラリーマンに 実父の怒鳴り声を思い出しら手足が冷たくなり震え出す
やっとの思いで、じゃあ 帰ります
と声を絞り出すと
鞄を持ち、サラリーマンに背を向けてドアに走る
背中から聞こえるその声に心臓がバクバク音を立てる
靴を履こうとしたが上手く履けず、走って逃げることは不可能であった。
幸い、所持金は6000円程 何とか払える事には払えるが
何故私は一方的に脅され、急かされ、挙句ホテル代まで払わなければいけないんだろう?と思い至り
冷静になった途端また怒りが湧いてきた
元々そんなに気が弱いわけではない
何をそんなにビビっていたんだろう。このただのリーマンに。
予想外の行動に少し怯んだ様子のサラリーマン
大体、金を貰う立場だとは言え私にだって選ぶ権利はある。 リーマンが私を選んだように。
私の顔は怒りで歪んだ般若のようになっていたと思う。
「そんなにホテル代が欲しいなら上の人に建て替えてもらいますので、待っててもらえますか? 今、この場で、電話しますので。」
咄嗟に出た口から出まかせだ
このリーマンは私を業者の人間だと思っているようだしこの状況でそれはとても好都合だった。
もちろん上の人、なんてのは居るわけがない
ただただそれを悟られない様に精一杯凄む
「どうしますか?ちょっとお時間いただけますか?」
と再度問い掛ける。完全に形勢逆転だ リーマンは自分の鞄を引っ掴み ごめんね、ごめんね、と呟きながら部屋から飛び出した
部屋のドアがバタンと閉じ 一人になる私
心臓な未だにバクバクと音を立てていた。
怖かった 本当に。 安堵でへたり込むが、只ならぬ気配を感じ取ったホテルの従業員が「大丈夫ですか?」とドアの向こうから話し掛けているのに気付き急いで外へ出る準備をする
十中八九叩かれると思うが恐怖よりも 簡単に数万円稼げることの満足感の方が大きかった。
約一カ月、私はこの出.会.い.系だけでご飯を食べ、服を買い、遊び歩いていた。
金はあればある程良い、本気でそう思っていたし 財布にはいつも最低で10万円は入っていた。
無くなればまた抱かれて、足せばいい
オッサンのことも薄らいでいった時、見覚えのあるアドレスからメールが届いた。
「今日、会えない?」とだけ書かれたメール これだけなのに 何だか少しホッとして嬉しかった
また あの優しいオッサンに会える。
前回で完全に心を開いていた私は 誰に会うよりもウキウキしていて、何より 誰が見ても楽しそうだったと思う
久しぶりだねえ、なんて話して さっそくホテルへ
テレビを見ながら オッサンと談笑する。 おそらくオッサンは今で言う「なんJ民」だった。今程なんJ用語は普及していなかったし、もちろん会話でネットスラングを使う素振りも無かったが、ふと、オッサンと話してそう感じた。一方私はずっと2ちゃんねるのニュース速報板を見ていたので
ネットの話題や趣味についてやけに話が合うことに気付く。
最初も2回目も、ずっと セク□ス2.雑談8といった感じで
私もオッサンも 話し合うだけで何故だか心が落ち着いた。
2ちゃんねるの雑談に近い、どうでもいい会話
それが妙に居心地が良かった
この間食べたコレがうまかった、昨日テレビに出ていた深キョンが可愛かった、など
本当に心底くだらない話なんだが
台風が香川県に寄ってうどん食って帰った みたいな話題を一番良く覚えている。
なにこの讃岐うどん好きの台風wwwwww
両方することは一緒なのに、円.光.なんてしなければいいのに、そんな私の馬鹿らしい生活は2年ほど続いた
私はいつの間にか19歳になっていた。
そろそろきちんとしたアルバイトをしないと、非常にまずい
2ちゃんねるに入り浸っていただけあって、ただのフリーターですら世間ではボロクソに叩かれると分かっていたので
現実もしっかり見えていたんだ。
オッサンとも、もう別れを決めよう
そう思った矢先、オッサンからメールが入った。
頭が真っ白になった。 お金は この生活を続けていく中で200万は溜まっていたので苦労はしていなかった。
ただ、 オッサンが入院 この事実が衝撃的過ぎてしばらく呆然と立っていた。 この2年間月に2度ほど会うペースだったがとても元気に見えたしオッサンはいつも通り、オッサンだった。
病気だとして、オッサンが死んだら私はどんな顔をするだろう そして、オッサンの最後の相手が私だとして 私が何百人とも関係を持った汚い売女であるという事実が私自身、酷く心に痛かった。
まだまだ子供だったため、手術≒ガン としか考えなかった私は初めて、オッサンに電話をかけた。
コールはするが何回掛けても 繋がらなかった。 何日も何日も。
思えば私は オッサンの本名も家も知らない
知っているのは偽名と年齢だけ
もし突然オッサンが死んだら何もしてあげられないのだ。
これまでに無い虚しさと、 売女としてではなくもっときちんとした関係で向き合いたかったという後悔が襲ってきて私はどれくらいぶりか分からない涙を流した
そうだとしたら オッサンの携帯は既に遺族の誰かが持っている筈である
もし電話を掛け続けて オッサンの携帯を持っている誰かが出てくれたあかつきには、本当の事を正直に話して どれだけ蔑まれようとも葬式には参列するがつもりだった。
電話をかけ続けて4日後、オッサンの携帯から二度着信があった。
お風呂に入っていた私が出てくる時に着信があったのでびしょ濡れのまま裸で電話に出る
「もしもし?」
良かった 生きていた
と思ったのも束の間「あのー どちらさまですか?」
予想もしていなかった言葉が続いた
それはそうだ、教えた記憶も無いしそんな機会も無かった。
おそらくオッサンは知らない番号から毎日掛かってくるものだから、少し怖くて様子を見てかけ直したのだろう。
深刻に考えた自分が阿呆らしく子供のようにケタケタと笑ってしまった
「あ!リサさん!あーー!なるほど!なるほど!ごめん!」
笑い声だけで私だと気付いてくれたオッサンはしばらく 気まずそうにして実に情けない笑い声をあげた。
オッサンもきっと、私の番号を知らないこと自体を忘れていたんだろう
どうやら2人とも天然らしい
人の事心配している場合か!と喝を入れる。どちらが年上か分からない
何故入院?心配したよ。病気は?と捲し立てる私にオッサンはまたしても衝撃的な一言を放った
衝撃やわ
明日また書きます
何を言っているのかさっぱり分からなかった。草野球?骨折?
病気じゃなくて?
俺も歳だねーと笑うオッサンを、どれほど心配したか分かっていないだろうと小一時間説教した。
私も親族も体が丈夫な為、入院と言えば大病と 自分の中では勝手に相場が決まっていた為本当に力が抜けた。説教の後もオッサンはありがとうねえなんて言いながら泣きそうな声で笑っていた。
ここで重要な事に気付く。独り身で、九州の田舎から東京に出てきたと言っていたオッサン、怪我くらいじゃもしかして親や親戚は見舞いに来ないかもしれない。怪我くらいでとは言えど大怪我も大怪我であり、オッサン一人じゃ寂しかろう。
心の底から「お見舞いに行って励ましてあげたい」そう思った。
この後に及んでまだお金の心配をしているのかと少々呆れながらも
私は仕事はしていないけど貯金と時間はある。心配だから行かせてくれと頼み込み 何とかオッサンの入院先を聞き出した
この頃になると私にとってオッサンは友達でもなく恋人でもない、家族のような存在になっていた。家族とするのならオッサンは頼りないお父さんだろうか。実父とこんな風な関係になれたらどんなに良いことだろうと少し感慨に耽って電話を切る。
きっと要らぬ恥をかかせてしまう事だろう
オッサン自身、待ち合わせの時は少し人目を憚り隠れるように私と歩いている
明るい茶色だった、自慢のロングヘアーを 整えて自然な黒髪に染めた。
露出の高い服しか持っていなかったので、ユニクロへ行きTシャツとスキニージーンズを購入し、物心ついてから初めて、ハイヒール以外の靴を買った。歩きやすい、白のリーボックのスニーカー
いつしかオッサンに勧められたスニーカーであったが、まさか自分が、オッサンに会うためにオッサンに勧められたスニーカーを買うとは夢にも思わなかった。
恋人とデートをするわけでも無いのに、
何故か私の胸は弾んで、誰かにこの事を話したい気分だった
友人も恋人も居ない私にとってオッサンとの交流はかけがえのない物であり、オッサンにとっての私もそういう存在で居たいと思っていた。
誰かにここまでしてあげたいと思うのは初めての事で 少し興奮気味に、今日染めたばかりの髪をいじりながら早めに就寝した
何故か落ち着かない自分に少し戸惑う
軽い気持ちでセク□スは出来ても 見舞いへ行くには根性が要るなんて全く可笑しな話で、それに気付いて笑いそうになりながら
目的の駅で下車する。
いくら私が若いと言っても手ぶらで見舞いに行く程非常識ではなかった。
オッサンが好きな食べ物は知っていた
もんじゃ焼き、塩焼きの鮎、水羊羹、チョコレートの掛かったポテトチップス
こうして並べてみるとあまりにもチグハグな好み。
オッサンは味覚音痴である
去年のバレンタインに、手作りチョコレート、但し一つだけ練り辛子を混ぜたものを差し出したが
さすが、リサ様は天才だね~なんて冗談を言いながら美味い美味いと全て食べてしまった。
オッサンの熊のような体型はこうして成り立っているのかと妙に考えてしまう。
オッサンは何を食べても何を飲んでも美味しいと言うし、そこが私は好きだった。こうして見舞いに行く際も あまり思い悩む必要も無い。
とはいえもんじゃ焼きや鮎は手土産には向かないため
水羊羹、それから例の如く少し悪戯を加えたチョコレートを持って 病院の入り口をくぐる。手が少し汗ばんでいくのが分かった
どうやら相部屋らしく何人もの名前が書いてあるプレートが見つかった。
意を決して中に入ると、オッサンはぽかんと口を開けながら高校野球の中継を見ていた。入り口のドアは既に開いていたため、忍び足で中へと入る
余程集中しているのだろうか、こちらには全く気付かない
その姿が妙に滑稽で 吹き出してしまったので、存在がバレてしまった
ぽかんとした表情のまま目だけをこちらに向け、数秒の間見つめられていた
「あれ!!?リサさん!?ギャルじゃない!」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔とはまさにこのこと
余程驚いたのか背中が攣ってしまったオッサンは少しの間ヒィヒィ言っていたが
徐々に落ち着き、 椅子、これ使って と
怪我をかばいながらゆっくりとベッドから動いてくれた
久々に会ったオッサンは
劇的に痩せているわけもなく、不健康そうでもない、相変わらず野球が大好きなオッサンだった。
少し肩の力が抜け、気恥ずかしさからつっけんどんに手土産を渡した
どうしたのその見た目、なんか普通の女の子みたいだよ!と失礼な事を言うオッサンに心の中で突っ込みながらも普段と変わらぬ会話を楽しむ
どれくらい居ただろうか
水羊羹を2人で食べ、私は大してルールも分からない野球の中継を見ながらオッサンの笑い声とヒグラシの声を聞いていた。
それはなんとも言えず癒される この上のない情景で
何故だか私は涙が出そうになっていた
「お嫁にしたいくらいだなぁ」
と呟いて 困ったように目を細めて笑っていた。
ここで動揺してしまったらオッサンも傷付くだろう
あと20kg痩せたらね!なんて適当に誤魔化しながら 荷物をまとめてここを出る準備をする。
オッサンが カサッと何かを私の鞄の中に入れて来たのに驚き、顔を上げてオッサンの目を見る
可愛い和柄のぽち袋に入った一万円札。
何で、と言いかけ、突き返そうとする私の手を制止し、ぽち袋をもう一度鞄に仕舞われた
しばらく助けてあげられないかもしれないけどこれくらいなら、リサさんの為に出来るから
いつもより小さい声で言うオッサンの表情は 見れなかった。
じゃあ、とどちらともなく別れを告げ、
手を振り、振り向かずに歩いて行く
帰りの 人も疎らな駅のホームで
私は何故だか哀しい涙が止まらなかった
遅くてすみませんがまた来ます
その涙は
察して欲しかった心の涙か
過去の自分を恨んだ涙か…
今までのお金を削りながら家から出ることも無く日々を寝て過ごす
かといって今更実家に帰れるわけもなく無気力の裏は焦燥感でいっぱい、何をするにもどうしようという気持ち
本来ならもっと早めにこの感情になっていても良かった筈。
19歳中卒円.光.で暮らす少女など誰がどう見ても最底辺で、焦りすら今まで忘れていた事に気付く。
オッサンはただ一人、きちんと一人の人間として接してくれた人だと思っていた。それだけが自分の心の拠り所だったが、そのオッサンにすら 見舞いの件で一人の売女に過ぎないんだと突きつけられたような気がして酷く落ち込んだ
恋人も友人も居ない私の誕生日は虚しく 成人してしまう焦りと共にまた一日が終わると思っていた
携帯を弄り何と無く自分の人生を思い返す
不良少女のテンプレートのような人生で、今までもこの先もきっと私は不幸の方へとズブズブ進んでいくんだろうなと
飲酒も、初めてではないが
こんな暗い人生に少しでも景気付けしようと、コンビニで少し高い缶ビールを買って飲む
夜8時頃
オッサンから突然メールが来た
「今日会える?」
いつもの短文で少しガッカリするが、金が無尽に沸くわけでも無く 少しでも足しになればと思い
OK との返事を出す
やはり見た目を変えたおかげか、オッサンも私の隣を歩きやすくなったのだろう。それについては私も同感であった
もちろんセク□スなどする気分ではない
というか、セク□スをしたいと思った事が今まであっただろうか。実父にオ.カ.されてからというものどうやら私にとってのセク□スは「しなければいけないもの」になっていたらしい
異常性にも気付くが常に異常であればそれは自分におっての正常であると言い聞かせオッサンを待つ
ビールのせいかセク□スを想像すると身体が非常に重苦しく、来たことを少し後悔した
駅を抜け、人達が犇めき合う繁華街の中、オッサンはこれまた珍しく私をリードするように歩く
足を少し庇いながら歩いているのが痛々しくて、でも健気で、笑ってしまいそうになる
着いたのは何故か居酒屋
ビール臭い息がバレたのか、と思い気まずくなるが私に構わずスイスイと店内へ入っていくオッサン。
「今日は誕生日だよね、成人おめでとう」
オッサンが私の誕生日を覚えていたとは
到底想像もしなかった。確かに口走ったことはあるが日常会話の中の、あまりにも何気ない一言だった為、私自身も忘れていた程だ。
こう面と向かって祝われると何処か気恥ずかしく、
私はお礼を言いながら急ぎ足でビールを飲む
オッサンと酒を飲むのは初めてで、
つまみの趣味も飲み物も趣味も私と全く同じ
それを言うと、オッサンみたいだねぇリサさんは と笑われてしまった。
かつての秋葉原はバスケットボールのコートがあった話
たくさんの話をオッサンとゆっくり楽しむ
4杯目、もうホロ酔いを越して少し酔っていた私
オッサンは平気な様子で芋焼酎を飲む
そういえば、 とオッサンが口を開き 改まった様子で椅子に座りなおす
ポーッとしながらその様子を見ていた
「俺、結婚、しようかと思って」
思わず大声で言ってしまい、咄嗟に口元に手を当てる
オッサンは照れながらも
田舎の両親が心配なこと。前々から相談されていた見合い話を受け、結婚して田舎に引っ越そうと思っていること
沢山話した後オッサンは 何故か寂しそうな顔で
私を見て お金、助けられなくてごめんね
と小さな声でつぶやいた
私は号泣しながらオッサンに言った
お金の為に会っていたわけではないこと。
とても幸せだったこと。
オッサンのことを 自分の家族よりも家族のような存在だと思っていたこと
ホテル以外にもたくさん行きたいところがあった
オッサンの田舎にも行ってみたかった
もっと 2人で一緒に居たかった
普段どちらかというとクールに取り繕っている私が全ての想いをぶちまけた時
オッサンも 静かに俯きながら泣いていた
ありがとう、ごめんね ありがとう
壊れたラジオのように繰り返し 両手を差し出して握手をする
言葉はもうそれしか出なかった
それ以上言うと 何か崩れる気がして
酔った頭でも制御している自分に感心する
その場でオッサンのアドレスを消し、オッサンも私のアドレスを消す
元々知りあわない筈の2人が4年間も行為を重ね
こうして終わりを迎えようとしている
死ぬ程寂しい想いをしまい込みらオッサンと駅に向かう
最後電車
オッサンとは逆方向 もうオッサンとは会う事もないだろう
最後に 「結婚おめでとう!」と背中に投げかけるとオッサンは 幸せそうに笑っていた
私はもう これで十分だと思った
恋でも友情でも無い曖昧な2人の最後らしいと。
こうしてオッサンとの4年間は幕を閉じた
ありがとうございました
何か質問あればどうぞ
何か職には就いた?
しがない事務職員ですが、仕事はしています
毎日満員電車に揺られていると、あの頃が 長い夢だったような気すらします
しがないとか言わないでよ。
ちゃんとしようと思って就いた職だろうに。
頑張ってんだねぇ。
必死に探しました。派遣社員から、正規雇用していただきました
なんだか褒めてくれてありがとう。
私もそう思いますが、そもそも私の人生が創作物のようなものなので自分にとってはあまり違和感は無いです
人の繋がりって大切だな。
一応聞いてみるけど、妊娠やら病気やらはなかった?
あんな出.会.い.系でオッサンのような人と会えた事が奇跡だと思っています
妊娠は無かったです。病気は、多々ありました
その都度治していましたが、注意してもなるときはなります
ゴムありでそれでしたから出.会.い.系で生.ハ.メ.は大変危険ですよ
病気はあったんか…
大変に輪がかかってたんだな…
いや、俺は出.会.い.系やらんけどw
やらないですよね、私ももうやる気はありませんが
出.会.い.系を見ているとあまりにも生.ハ.メ.派が多かったもので、、
未だに居ませんし、これから先本当の事を話せるのはあのオッサン以外に現れないと思っています
吐き出す時は、匿名のこの場所がいいのかな。
そうですね、会社はもちろんプライベートで友人が出来たとしてもこんな話はできませんし、匿名万歳です
いや、恋をしてたんちゃうか?イッチは
知らんけど
そうやと思いたいんやろなワイが
彼氏が居たことも無く、初恋すら経験が無いので
どれが恋なのかも分かりません だけど困った時や死にたい時に会いたいと思うのはあのオッサンでした
良いお父さんになりそう
居るときは当たり前に思えていなくなっても実感が湧かず
いつもなら居るはずの場所にいない事に気付いたときに
大切さを実感するんだって
同意